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いつでもみんなの先頭切って走ってゆくキミの背中が好きだった。
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『死神の精度』(伊坂幸太郎/文春文庫)読みました。
まず軽く内容紹介。
千葉という男を名乗る「調査部」の死神が、死神によって死を定められた人間に接触・観察し、7日間の調査を終え「可」か「見送り」かを報告する、といった単純で分かりやすい内容です。
この小説では千葉と6人の人間の一週間を描いており、短編としても読むことが可能なので読む側の人間としてはキリがつけやすくてその点は楽でした。

まず一言感想を言うなれば、流石伊坂作品(ワールド)といったところでしょうか。
やっぱり構成が良いね。『重力ピエロ』の時も思ったけど、伏線の回収が絶妙で……と、言いたかったのですが、この作品に関しては個人的に好きではなかったなと。
そもそも伏線と言うべきではないだろうので、どう表現したら良いか……。ぶち込んできた?
「そう来たか」とも思いましたが、私は作者の嫌らしさを勝手に感じてました。性格が悪いので。
第三章の雪山篇の必要性も「?」というか、何故あのような形式にしたのかなと疑問に思います。
ついでに第四章も「ん?」と思うところはあったのですが、そこは単に自分の理解力の問題かもしれないので多くは言いません。時間がある時この章だけちゃんと読み返してみよう。
ところで。私がこの作品で最も素晴らしいと思ったのは、「可」と「見送り」の比率です。
これは本当に素晴らしかった。そしてその順番も良い。
死神というものについて考えるのには最適だったのではないでしょうか。
小気味良い、あっけらかんとした文章もなるほど雰囲気が出ているなと。
度々音楽を「ミュージック」と表現してはイラっとするのも、この作品では一つの味です。

疑問に残る点も多くあったりします。
日本語に精通していない死神・千葉。
死神の世界でも転勤のように何年か毎に担当地域や国が変わったりするのか。
それともここで取り上げられているのが偶々全員日本人というだけで、実はその間間に外国人の調査もしているとか。
死神は随分と長生きな生き物(死神を"生き物”と表すのも妙ですが)らしいので、少なくとも日本国担当の固定化は無いのだろうなと。
死神の休日制度はどうなっているの、休日は何をしているのとか。
まあそこまで突っ込んで解説してもらっても完全に蛇足でしか無いので結構なのですが。
キレイに纏めすぎた感もあるにはあるのですが、人間こういうの好きだしね。
とりあえず私は「死神」を理解出来ないし、「死神」も人間を理解することは無いのでしょう。
そういう関係で良いのです。だからこそフラットな気持ちで物語を追えるのだと思うので。

長々と語りましたが、うん、よく出来た話だと思います。私はそれなりに好きでした。
書き手によっては中二病になり下がるテーマで臨んだその完成度は流石です。
でもやっぱり私は人間の感情の動きというものが好きなので、「死神」目線はちょっと物足りなくもありましたが、登場する「人間」は"人間人間”してて好きでした。
"人生”として評価するなら話は別ですが。そこは私としてもややこしいところなので。
とまあ、1回読んだだけで十分な作品なので、今後はおとなしく本棚に収まってもらおうかと思います。
自分で書いておいて否定的な感想が目立つ気もしますが、素直な心で読めば読後感の良い仕上がりになっているというのが私の感想なので、そこはどうぞお間違えなく。なかなかに興味深い作品です、はい。
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