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いつでもみんなの先頭切って走ってゆくキミの背中が好きだった。
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『天体議会』(長野まゆみ/河出文庫)読みました。
一言でいうと透明感溢れる綺麗な物語。どこか神秘的な雰囲気さえする。
それは星や海などの美しい情景と言葉たち――市内交通(ピユス)・・淡紫色(ヘリオトロオプ)・檸檬水(シトロンプレッセ)、など――が作り出す世界。
主人公である銅貨と親友の水連は、至ってどこにでも居そうな13歳の少年たちです。
放課後に足繁く『鉱石倶楽部』に通い、石を買い食事をして小遣いを使い果たし、夜になると展望台に昇って天体観測をする。そんな普通の少年たち。
銅貨はほんの少し物怖じする性格で、水連が慕う兄の藍生に嫉妬して拗ねてみたり。
水連は顔立ちが良く、意思がはっきりとして、狡猾な面もあるが、死んでしまった愛犬をとても愛していた。
それに加え銅貨の兄、そして自動人形(オートマータ)と噂される不思議な少年。
この4人が奇妙に織り成って、またすれ違いつつ、核心に触れることのないまま終わってしまいます。
何故不思議な少年は水連の眸から「結晶」を取り出せたのか。
何故兄は父が仕事で赴いた「南」に行ってしまったのか。少年が向かった「南」と同じ場所なのか。
兄と少年の関係は。少年は本当に自動人形だったのか。病院で亡くなった少年とは一体。

謎は多く残ります。でも、だからといって「答え」を求めては駄目なのだと思いました。
銅貨と水連の「日常」はこれからも続くのです。いつもと変わらぬ日常が。
それで良いと思いました。だからこの話は綺麗なのだと。
銅貨と水連の友情が続く限り、魅力が失われることはないのだと。
少年期だけに許される、自由で解放的なモラトリアム。それは羨望にも似た憧憬――。
(例えば美しいボーイソプラノを持った音楽部の鷹彦はそれを失った時に悩むでしょう)

私も初めて読んだ時に思ったのですが、独特な言い回しに疲れてしまうかもしれません。
でも読んで嫌な気持ちになることはまず無いでしょう。
綺麗な綺麗なお話。キラキラした気持ちに浸りたい方は是非
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