陸に上がった鯨の物語

私なんかのことを諦めたくないと言ってくれる人がいました。
それは奇跡みたいなことだと思っています。
もし連絡が取れる状況にあれば、あの人の想いに応えたかった。伸ばされたその手を取りたかった。離さないでいて欲しかった。
ほんの数日一緒に過ごしただけだけど、あの人以上に優しい人を私は知りません。
でもどうしようも無いのです。足掻くだけ足掻いたけど無駄だった。
求めた手は見えない壁に阻まれてしまいました。もう、届かない。
だから私は、やさしい思い出として大切に胸に仕舞っておきます。
苦しくて寂しくてどうしようもなく辛いけど、過去に変えます。
私には勿体無い人でした。
浅ましく願った罪の結果がこういう形なのだとしたら、私はそれを罰として受け入れます。

……私のために最後まで抗ってくれてありがとう。
信じてくれてありがとう。
求めてくれてありがとう。
あなたなら、好きになれる気がしたよ。
雪が解ける音がしたの。
私の奇跡の人。
ありがとう。ありがとう。ごめんね。
さよならも、言えなかった。(でも言いたくなんてなかった)
私よりも素敵な人がすぐに見つかるから、落ち込まないで。そして早く忘れてね。
どうかあなたよ幸せに。